木造班 木造三階建学校系 耐火系 伝統系 密集系 文化財系 破滅型火災系
木造三階建学校系


担当
M2 角田 彩乃
M2 江田 健一郎
M1 市原 卓磨
M1 渡邉 真莉子
B4 神戸 麻千子
B4 原  崇之

客員研究員 安井 昇(理工総研)




 近年、木造建築は、木造そのものへの嗜好の高まりの他、森林資源・林業の健全化、低炭素化等、様々な関心から注目され、2010年には公共建築物木材利用促進法が施行され、国土交通省により木造三階建て大規模学校建築(以下「木三学」)の基準検討方針が表明された。  


 このうち、木三学については、現行建築基準法では、防火上、学校建築は、木造では、三階建ても延床面積3,000uを超える規模も許容されていないため、現行法令の全体的枠組の中でその実現可能性を明らかにするには、学校において現に取られている防災対策の考え方と一般的な消防体制のもとで、これらの規制の背後にある火災危険を処理できる方策を明確にする必要がある。
 そこで、本研究では木造準耐火建築物の正確な性能設計を目指し、建物レベルにおいてその準耐火性能を評価することを目的としている。昨年度は世界でも最大規模の実験である木造三階建て学校の実大火災実験を行った。本年度も継続して大規模木造建築物の実現のための開発・研究を行っている。

耐火系


担当
M2 小宮 祐人
M1 中野 裕晶
M1 山口 智世

客員研究員 安井 昇(理工総研)



 2010年に「公共建築物木材利用促進法」が制定された。住宅等既存の主要木造市場は成長を期待できないため、今後木材利用を特に促進するには、従来と異なる建築市場を開拓する必要がある。それが期待される代表的な分野である大規模建築や建築基準法上の特殊建築物を市場として開拓するには、耐火・準耐火構造部材の開発が必要であるが、樹種・断面の寸法・構成・荷重条件等は多様であり、その開発は現状では実験により試行錯誤的に行われているに留まり、特に耐火構造はごく限られた仕様が認定されているに過ぎない。そこで、木質部材の燃焼・高温性状を工学的に予測することを目指す。
 また、近年、LVL・CLT等、断面の大きい木質面材が実用化されてきた。軸組木造と同様、燃えしろ設計等による高度な防耐火性能が期待されるが、その設計手法を実証的に誘導する。研究内容は、大断面木質パネルの火災加熱下の炭化速度・断面の力学的性能の変化の予測法の開発、準耐火構造、耐火構造等の実現のための基盤技術の整備等を含む。




伝統系


担当
M2 加来 千紘

客員研究員 安井 昇(理工総研)


 広葉樹材は古くは奈良時代から建築部材として利用されてきており、特にケヤキは西本願寺を始めとする寺社建築において最も重要な木材の1つとされてきた。今後も寺社建築や文化財保存修理の用材等として、広葉樹材の積極的活用が望まれると考えられる。 しかし、広葉樹材は、スギ等の針葉樹材や集成材に比べ防耐火性能に関するデータが極端に少なく、JAS化もされていないため、現行法令運用上、燃えしろ設計を適用できなくなっている。
 一方、建築基準法施行令第129条の2の3は、燃えしろ設計を行わなくても主要構造部の1時間準耐火構造の認定を受ければ木の躯体を現しとした大規模木造建築物が可能になると解釈できる。


 2010年度の研究内容としては広葉樹部材を用いた大型寺社建築実現に向け、大断面広葉樹製材による1時間準耐火構造の柱及びはりの開発・寺社建築の典型的な柱-はり接合部の防耐火性能の把握を行った。2011年度の研究内容としては、火災後の部材の継続的使用の実現に向け、木材における加熱冷却後の力学的性能の把握と柱の火害診断の提案を行った。

密集系


担当
M2 石塚 正浩
B4 平川 千紗

客員研究員 安井 昇(理工総研)


 木造密集市街地は、阪神淡路大震災等の過去の事例からその災害時の耐震・防耐火性能の脆弱性が露呈し、早急な面的整備が求められている。しかし、木密地区特有の問題である建て替えの困難性、コスト面、及び住民の高齢化による改修意欲低下等の問題により整備が滞っており、未だ老朽建築物が多く存在する危険な地域が残存している。
 その現状を受けて、耐震・防耐火性能を地震後火災においても維持することができる「耐震防火同時補強技術」の開発が行われた。この耐震防火同時補強技術を用いて木密地区内の建物に対して改修(以下「補強改修」と呼ぶ)を行い、面的整備を促進させることで、市街地全体の防災性能の向上が可能になると言える。


 一昨年度の研究では、木密地区内の裸木造・防火造に補強改修を適用して、防耐火性能を準耐火造相当まで向上させる手法を用いて面的整備を行った場合の延焼抑制効果について、実在市街地でかつ重点整備地域である東京都墨田区京島地区(約25ha、全2105棟)を選出し、検証を行った。検証の結果、地区内の裸木造・防火造の補強改修率のよる延焼抑制効果の推移や、低い補強改修率で高い延焼抑制効果を得るために優先的に改修すべき物件の特徴などが明らかとなった。


 また2010年度は、「すみだ燃えない・壊れないまちづくり事業」の一環として、墨田区の木造密集市街地内の既存の建物に、実際に補強改修を行った。

文化財系


担当
M2 石塚 正浩
M1 池田 成介
B4 田所 玲奈

客員研究員 安井 昇(理工総研)
 京都を代表として、多くの歴史的市街地には、重要文化財建造物が所在する。これらの市街地は歴史的景観を形成すると共に、限られた敷地に木造家屋が建ち並ぶ木造密集市街地となり、周辺から重要文化財建造物への延焼危険性を飛躍的に高めている。重要文化財建造物は木造建築物が多く火災に脆弱である為、それらの確実な継承には火災の危険性を最小限に留める為の防災対策が必要である。
 これまで重要文化財建造物単体の防災対策は計画されてきたが、重要文化財建造物と周辺市街地を一体として捉えた防災対策については検討が行われてこなかった。そこで、周辺市街地の防災性能を向上させることで、重要文化財建造物への延焼危険性を低減させ、更に周辺市街地の歴史的景観の維持・形成にも寄与できると考えられる。また同時に、重要文化財建造物が周辺市街地の防災性能向上の一助となる計画が望まれる。




 昨年度の研究では、重要文化財建造物が所在する歴史的市街地において、重要文化財建造物への延焼危険性の低減を可能とする、市街地防災性能の向上と共に歴史的景観を維持・形成する火災対策の検討を行った。既往研究にて、軸組木造による準耐火構造の開発や裸木造を防火造相当へ改修する手法の開発が行われており、これらを適用して歴史的市街地の面的整備を行い、市街地防災性能の向上を図る延焼抑制対策と、火災被害を最小限に抑止する為の早期の初期消火対策を検討した。


 2012年度は角館、加賀橋立といった地域を対象に研究を進めていく。

破滅型火災系


担当
D2 牛 雪民(ニュウ ショウミン)




 近年、アジアでは高層ビルが短時間に全焼する火災が続いている。火災が際限なく加速度的に拡大する現象を「破滅型火災拡大現象」と名付け、その発生機構を実証的に解明しながら、自然に鎮火するように制御する方法を誘導する。